大宮台地の湧水 ほか街歩き、お出かけの記録

地元大宮台地の湧水を中心に、地理、地形好きのお出かけの記録です。

さいたま市西区 指扇辻川の湿原と秋葉神社

秋葉の森総合公園を水源とする指扇辻川。

前回の訪ねた源流部に続き、その下流側を訪ねてみました。

※前回記事

 

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指扇支台は台地の西側。鴨川の谷に隔てられている。

 

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指扇辻川流域(地理院地図を加工)

指扇辻川と湿原

下流側の低地も、将来は秋葉の森総合公園として整備される予定ですが、現在は市有地となっているようです。

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2020年12月20日撮影

12月に訪ねた際はちょうど葦が刈られた後。谷全体の地下水位が高く、湿地になっている様子がよくわかります。

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2020年12月20日撮影

指扇辻川は湿地帯の中を蛇行しながら流れます。この写真だけ見ると北海道の湿原と言われても納得しそう?

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2020年12月20日撮影

こちらは低地を横切る道路の下流側。まばらに湿地に多いヤナギ類が生えています。2020年の12月は少雨で涸れている湧水も出ていましたが、ここではあちらこちらから水が出ています。

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2020年12月20日撮影

そして2021年の4月に再訪しました。上流側のアシ原は刈り込まれた場所も芽吹いて緑色に。

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2021年4月撮影

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2021年4月撮影

下流側はヤナギ類が芽吹いて萌黄色がまぶしい!

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2021年4月撮影

公園化された場合も自然観察ゾーンになるようなので、大宮台地の原風景を見ることが出来る場所になったらいいなと思います。

 

中釘陣屋跡 

指扇辻川の西側の高台は、「中釘陣屋」の跡。私は訪ねて初めて知りましたが、土佐山内家の分家である指扇山内家の陣屋があった場所です。

土佐藩の藩祖である山内一豊の甥・山内一唯が初代で、その後四代の豊房が元禄2年(1689年)も土佐山内家に養子となり、陣屋は無くなったとの事。全然知らなかった…

 

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中釘陣屋周辺の地形

周辺の地形を見ると、西側は先ほどの湿地帯、北側と南側にも谷があり、当時は湿地だったと思われます。三方が天然の堀になっていて、いかにも城や陣屋に向いていそうな地形!

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2020年3月21日撮影

陣屋のあった台地上は、現在は屋敷地と農地となっており、遺構は残っていません。畑の区画の高低差に少しだけ陣屋だったころの面影を感じるような気もします。

秋葉神社

中釘陣屋跡の東側、台地がくびれた部分に鎮座するのは秋葉神社。「関東総社」とされています。付近の神社の中ではかなり大きな立派な社殿。

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2020年12月20日撮影 社殿と社叢。

社伝によれば秋葉神社聖武天皇天平年間(729年~)飽波神社として駿州に鎮座、その後遠州に移され、それから後に当所に遷座したと伝えられるとのこと。ここに秋葉神社が出来たのはいつかはっきりしませんが、少なくとも中世には当地に鎮座していたようです。

江戸期に入ると、先ほどの中釘陣屋に入った指扇山内家の守護神として崇拝され、寛文元年(1661年)に社殿を改築したとの事。今の社殿はその時のもののようなのですが、その割には文化財指定されているようではなくて、ちょっと不思議です。

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2020年12月20日 社殿を正面から

その後、当地が幕府領になると、紀州徳川家の祈願所となって崇拝されました。付近にはこの秋葉神社に向かう「秋葉道」があり、庶民の信仰も集めていたことがうかがえます。

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2020年2月11日撮影 立派な神楽殿もある

個人的に気になるのはその立地。前述したように北からも南からも谷が入り込み、台地が最もくびれたところにあります。

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2020年2月11日撮影 南側の谷から

南側の谷。だいぶ盛り土されてしまっていますが、湧水が残っていました。低地から見上げると秋葉神社の屋根が大きいです。

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2020年2月11日撮影

神社の北側には弁財天と弁天池。コンクリート造りの弁天島でちょっと無粋な感じもしますが……

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2020年2月11日撮影 弁天島の裏から

弁天池には水がたまっていました。秋葉神社から少し下っただけですが、ちょうど谷頭にあたり、湧水ではないかと思います。

ただ、雨の少なかった2020年の12月に訪ねた際は涸れてしまっていました。湧出点としては標高が高いので少雨の影響は受けやすいようです。

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2020年2月11日撮影

なお、弁財天の向こうは、さいたま市ではめずらしい牧場。牛さんがこちらを見ていました。私が知る限り、さいたま市内の牧場はここともう一カ所です。

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2020年2月11日撮影

牧場の脇の水路。水路の底からも水が湧き出しているようです。これが中釘陣屋の北側の谷の流れとなり、指扇辻川に注いでいます。

秋葉の森総合公園拡張後は、秋葉神社と合わせてちょうど良い周遊ルートになりそうで楽しみです。