「川幅日本一」を歩く(1)鴻巣市御成橋付近(湧水、庚申塔、沈下橋等)
埼玉県は県土に占める河川面積の割合が全国一(3.9%)だそうです。「川」と言っても実際に川が流れている場所ではなくて河川法における「河川区域」の面積ですが。
それを元に「埼玉は川の国」というキャッチフレーズがあったりして、海なし県の苦し紛れな気もちょっとしますが、一方で埼玉県という地域の特色をよく表しているのではないかと思います。
そしてそんな「川の国」埼玉の中でも全国に誇る「川幅日本一」の地、鴻巣市と吉見町の間を流れる荒川を訪ねました。前述したようにアマゾン川河口のような本当に川幅が広い場所ではなくて、河川区域の幅が日本一広い場所になります。
それでもなかなか面白い場所であり、川幅日本一の広大さを実感しながら歩くことが出来ます。ちょっと広大すぎるので、自転車でもあった方がいいかもしれませんが。
まずは鴻巣市の御成橋周辺をめぐります。
「川幅日本一」の標柱(地図①)
川幅日本一なのは県道東松山鴻巣線にかかる御成橋の付近。橋のたもとには「川幅日本一」の標柱が建てられています。そこに書かれた川幅はなんと2,537m。河川敷の幅だとしてもすごい長さです。
この辺りの河川区域、元々は水田でしたが、近年はポピーが植えられて春にはポピーまつりが開催されています。
こちらの写真はコロナでポピーまつりが中止になった2020年の写真ですが、こほれた種で咲いたのでしょうか。まつりが開催される年は一面に花が咲くようです。広大な河川敷にポピーが咲く様子は改めて見てみたいですね。
「川幅日本一」と言っても、通常はだだっ広い河川敷。しかし大雨の時にはその本領を発揮します。
2019年の台風19号では、まさに川幅いっぱいに水が広がる光景が広がりました。この広大な河川区域が遊水地となって、下流の洪水を防いだと言えます。
なお、色別標高図を見ると、河川区域(河川敷)の方が、吉見町側の集落がある低地より標高がやや高そうで、堤防が無ければ吉見町は大変なことになりそうです。
御成橋たもとの庚申塔
鴻巣市側は河川敷(河川区域)の外はすぐに台地になっています。この付近は大宮台地でも特に標高が高い場所で標高は25m強。御成橋の横の小道を河川敷に下りていくと、庚申塔が立っていました。
木の横に立つ素朴な庚申塔。三猿がいて、邪鬼を踏む青面金剛像が彫られていますが、ここの青面金剛はお顔が3つ。ちょっとめずらしいと思います。左側に年号が彫られていますが、正徳四年(1714)でしょうか?なお、ここが鴻巣宿から吉見方面に向かう古道のようです。
湧水のある稲荷神社(地図②)
さて御成橋の下をくぐり河川敷を歩きます。このあたりはポピー畑になる休耕田?と現役の水田が広がります。
水田の向こうにこんもりとした森と鳥居が見えました。
気になって行ってみることにしました。低地側から近づく道がないので、台地側に回り込みます。
近づいてみると稲荷神社のようです。地図には「勘兵衛稲荷神社」と記載されています。現在の入り口は台地側にありますが、参道の階段は河川敷の方に続いていました。
歩く人は少ないようで夏草が茂っています。
草をかき分けて下りてみると、入口の鳥居の横に池がありました。水は澄んでいて、て水路に流れ出ています。この池から湧き出しているようです。
今は近づく人はいないようですが、立派な石組みがあり、元々は神池として大切
にされていたのかもしれません。
表参道が河川敷の方に伸びているのも気になります。元々はこちら側にも人が住む場所があったのでしょうか。
沈下橋(滝馬室橋)(地図③)
再び河川敷の戻ります。地図を見ると御成橋の少し上流側の荒川本流にも橋が架かっているのが気になります。河川敷を歩きながら行って見ることにしました。
近づいてみると「制限幅員1.6m」の標識が!5ナンバーの乗用車は1.7mありますから、軽自動車しか通れません。
この橋(滝馬室橋)はいわゆる「沈下橋」「冠水橋」と呼ばれる洪水時には川に沈む橋。そのため川の流れの障害になる欄干は設置されていません。
滝馬室橋から御成橋方面を眺めます。簡易なワイヤーが欄干代わりにありますが、道の狭さと荒川本流の流れの速さでなかなかスリリングです。
沈下橋と言えば高知県の四万十川が有名ですが、荒川の中下流にも5ヶ所(2021年現在)残っています。ここは昭和初期に河川改修によって作られた新たな河道。川の対岸になってしまった農地に向かうために架けられました。農作業用の軽トラックが渡れればいいというスペックということなのでしょうか。
次回は荒川本流の対岸、横堤のある集落を歩きます。