北本市 横田薬師堂下湧水群と旧河道の湧水
今回は大宮台地北部、北本市の「横田薬師堂下湧水群」をご紹介します。大宮台地周辺では珍しい名前が付いている湧水。湧出量もトップクラスと思われます。
北本市西部は大宮台地でも最も標高が高いエリアです。荒川寄りで標高30m超、荒川低地は13mくらいなので、その差は15m以上。高低差が大きく感じられます。
ちなみに台地は東側に行くほど低くなり、東端は低地との境目がわからないような感じです。これは「関東造盆地運動」と呼ばれる土地の沈降の影響で、沈んだ台地の上に利根川などからの土砂がたい積しています。
横田薬師堂下湧水群(A)
北本自然観察公園のある谷と荒川の間にある城ヶ谷堤から下りて荒川方面に下りていくと、下がったところに池が見えます。こちらは戦後、荒川が直線化するまでは荒川の本流だった川の跡です。現在は釣り堀のようになっています。検索してみるとヘラブナ釣りで有名なようです。
横田薬師堂下湧水は駐車場の北側の階段を下りていきます。
湧水があるのは元は荒川が蛇行していた河原にあたります。
1960年代の航空写真に湧水の場所をプロットしてみました。
初めて訪ねた2020年1月は、前年の台風19号の爪痕が残り、少し荒れた状態でした。かなり上の方まで水が来ていたようです。
斜面の竹林はかなり上の方まで泥で汚れていて、河畔林の木の枝にはゴミが引っかかっていました。
なお、この場所、結構頻繁に水没するようで、2020年10月の雨の後立ち寄った際も水に浸かっていました。水は濁っていますが、ちょっと神秘的な光景。
元は川の場所なので、頻繁に水に浸かるのが自然なんでしょうね。それに適合した動植物が分布しているのではないかと気になります。
湧水は「湧水群」というだけあって、何か所から湧き出していますが、一番湧出量が多いところは木道で近くにアクセスできます。
大きな石の下から湧き出しています。大宮台地は掘り進めてもほとんど石が無い地質なのでちょっとめずらしい。荒川が運んだ礫なのでしょうか。
大宮台地の崖線の湧水としてはかなり水量が多いです。 (大宮台地の湧水は、台地上の涵養だけなので、どうしても水量は少なめです)
解説には「北本市内で最も水量が多い」と書かれていますが、大宮台地の湧水でトップクラスのはずです。台地上とかなり高低差があるので、他の湧水とは帯水層が異なる(より深い)のではないかなあと想像しています。そのあたりは今後の宿題です。
旧河道の湧水(B)と荒川ビオトープ
再び階段を上り、今度は旧河道を下流に向かって歩いてみます。
旧河道の周辺は「荒川ビオトープ」として、ワンドを作ったり、河畔林を育成したりして自然環境を整備しているようです。
旧河道へ下る斜面にも湧水の流れを見つけました。
洪水につかったりしながら、河畔林の環境がだんだんできてくるのではと思います。度々訪れてチェックしたい場所です。
城ヶ谷堤に西側の谷は北本自然観察公園として整備され、湿地環境や湧水が残されています。またその南側は戦国期の城跡、石戸城跡となっていて、見どころの多いエリアです。
それらについてはまたブログで取り上げたいと思います。